「角膜にキズ」
これは私が大学を卒業する少し前の、目のケガの話です。
ケガ自体は軽微なものでしたが、その出来事について記載します。
「恩師の退官行事」
私が大学を卒業する年に、所属していた研究室の教授も63歳にて退官となりました。
退官に際し、記念講演会という催しを市内の歴史のあると言われているホテルで開催することとなりました。退官記念行事なので、本人が好きな事を話して、あとは懇親会です。
我々学生は、行事において手伝いをしました。まあ傍から見れば“タダ働き”の都合の良い無償労働者なのかも? でもお世話になった先生なので、快く引き受けてお手伝いをしました。
時期は正確には覚えていませんが、卒論シーズンは忙しいので、卒論発表会直後の開催だったように思います。
この退官記念行事の際に、目に軽微なケガをするハメになりました…
「ケガの発生状況」
確か行事の後半だったか終わりの直前だったか、「荷物運び」の依頼があり、学生や教官が数名、ホテルの外に出て荷物を運んでいました。私もその中の一人として手伝っていました。
突然、「パーン!」という音がしたかと思ったら次の瞬間、私の右目に痛みが走りました! 何か落下物があったようで、地面で落下物が割れて破片が私の目に当たったようです。
何人かが少し騒ぎましたが、何事も無かったように作業に戻りました。
地面にはブロックが割れていました。そう、ブロック塀のあのブロックが高い位置から落ちてきたようです。ホテルは14階建て、何回から落ちたのかは分かりませんが、音の衝撃からは、かなり上階から落ちたように思います。
しかし、ブロックが落ちてくるって、どういう管理をしているんだ?
私はしばらく右目が開けられず… しかしせっかくの退官行事に水を注すのも気が引けたので、私は騒ぐことなくそっと帰宅しました。
「病院に行く」
一晩寝たら治るだろうと思っていましたが、翌日も痛みが残っていたので、大学の近所の眼科に行きました。
状況を説明し(何かの破片が飛んできて目に当たったと説明)、眼を顕微鏡で観察されました。結果、「角膜にキズが入ってるねえ~」
えーっ! 角膜にキズ? 大丈夫なのか?
それまで眼科なんか行ったことが無く、それだけでドキドキしていましたので、「角膜にキズ」と聞いて、少々驚きました。
先生曰く「目薬出しとくから点眼して。一週間くらいで治るから」と言われ一安心!
大したケガじゃなくて本当に良かった!
「その後の経過」
先生の言う通り、目薬を用法通りに注しました。
痛みも病院に行った翌日には収まり、目薬が無くなるまで点眼して、終わりです。
その後病院には行っていませんが、まあ問題無く自然治癒していると思います。
「しかし問題はそこじゃない…」
まあ、今ならホテル側に慰謝料と治療費くらは請求したのかなあ。当時はそんな事は全く念頭にもなく。
でも、運が悪ければ人ひとり死んでいたかも知れない… 高層階から落下したブロックが頭に直撃していたら、危なかったでしょうね…
この時は誰も騒がなかったから、新聞等には一切出ませんでした。
「数日後」
私のケガの件は、周りの数人しか知らないのですが、ブロックが落下して私が目にケガをしたのが教授の耳にも入っていたようで、教授がホテル側に文句を言ったようです。
「うちの学生を殺す気か?」と。
確か記念行事の翌々日だったか、支配人が研究室まで来られ、教授と私にお詫びされました。
お詫びとして、何故かホテルのキーホルダーと、慰謝料代わりに封筒に入ったお金をくれました。まあ裕福とは程遠い学生生活だったので、お金はありがたく頂戴しました。
でもね、その金額は「1万円」だったのです。県内一と言われる老舗ホテルの出したお金が1万円って、おいおい、相手が学生だからって、安くないかい?
下手したら死んでいてもおかしくない話なのに…
でも不思議なものですよね? もともと騒ぐつもりもなく、お金を要求する気などさらさら無かったのですが、いざお金をもらうと、その金額の少なさにガッカリするというか… 人間とはなんと強欲な生き物なんだ…
「角膜のキズについて」
さて、角膜のキズについては今まできちんと調べたことは無かったので、調べました。
- 「目にキズがついた」という場合、大半は角膜のキズを指す
- 角膜は5層構造になっている(角膜上皮・ボウマン膜・実質・デスメ膜・内皮)。
- 上皮層は活発に分裂し、細胞が常に新しく置き代わるので、キズの修復は早く、軽いキズならば一晩で治る。コンタクトレンズでついたキズや、目にゴミが入った場合の角膜のキズの多くは、この上皮層の浅いキズ。
- やや深い怪我によりボウマン膜を越えて実質に傷害が及んだ場合、目の中の炎症も起こり、治癒に時間がかかる。それでも一時的な傷害であれば、1週間以上かかることはめったにない。
- 角膜のキズは、ゴロゴロする、などの自覚症状を伴う場合もあるが、小さいキズの場合、自覚症状がほとんどないことも多い。
といわけで、角膜にキズが入る事自体は、さほど珍しいことではないようです。
私の場合は、「ゴロゴロする」という自覚症状はあったので、少しキズが深めだったのかも知れませんが、いずれにしろ大した事はありませんでした。
「結局のところ」
角膜にはキズが入る場合があるという話でした。
殆どは、「人間は強欲」というか、「私が強欲」という話なのかな? 大変失礼致しました!
しかし、ブロックが直撃しなくて良かったなあ~